これがプロ中のプロの演奏なのか。開いた口がふさがらない気分です。
NHK教育で、北ドイツ放送交響楽団&庄司紗矢香(ヴァイオリン)の演奏が取り上げられていました。庄司紗矢香はもうクラシックでは超のつく有名人。日本の若手ヴァイオリニストで、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールにコンクール史上最年少、かつ日本人として初めて優勝という快挙を成し遂げた人。何より1983年生まれ、僕と同い年です。パガニーニコンクール優勝のニュースが届いたとき、高校ですごい話題になりました(というか僕が話題にしました(笑))。公式ページはこちら。 彼女の演奏でいつも感じるのは、圧倒的な技術。僕はヴァイオリンは習ったことはおろか、弾いたことも触ったことも名前を聞いたこともないくらいの素人ですが、それでも(だからこそ?)彼女の演奏には超人的なものを感じます。細かい音符は混じり気がなくクリアな輪郭があり、弓のこすれる「雑音」は非常に小さく、何よりどんなに速いパッセージの重音(和音)でも、上下ぴったり正確な音が正確なバランスで響くのが本当に気持ちいいのです。それはいかにもコンクール的な技術ですが、CDで聞ける多くの巨匠たちよりも「うまい」ことは、やはりそれだけで一つの魅力です。 一方、ここで取り上げたブラームスのヴァイオリン協奏曲は、世界4大ヴァイオリン協奏曲とか言われながらも僕の中では苦手だった曲。第1楽章などニ長調のアルペジオを20分に引き伸ばしただけにしか聞こえませんでした。さらに、全曲は40分近い長大な作品。のはずが、僕はあっという間に引き込まれて、そのまま終曲まで連れ回されました。しかも、たかがテレビのはず。自分でもあきれました。そこではブラームスのパワーも改めて感じましたが、ここで取り上げたいのはやはり庄司の演奏です。 なぜヴァイオリンを弾くかという問いに、彼女が自分の声の表現力のなさを嘆いた、という話を聞いたことがあります(庄司の声はお世辞にもきれいな声とは言えないでしょう)。彼女は声が出ないからヴァイオリンを弾く、でもそのヴァイオリンは僕が今まで聴いたどんな声よりも「声的」でした。 たった一つのパッセージ、たった一つの長音の中に、彼女は常に複雑に表情を同居させているかのようでした。 明るい旋律から次に激しくなるとき、明るい旋律を奏でていながら音色の中にちょっとずつ激しさの成分を混ぜていくようなテクニック。 穏やかな旋律が次に発展するときに、穏やかな旋律の姿勢を一歩も崩さず、一瞬の隙を突いて発展を予想させるようなテクニック。 研究し尽くされたはずの超々名曲が、こんなにも美しく聴かせることができるのか。それは綿密な研究、コンクール的な技術、音楽を捉えた歌心、どれが欠けても成し得なかったような演奏でした。いろいろな音色を使い分けることができる、それは彼女の演奏には所詮前提だったのです。たった一つの音の中で、それをグラデーションのように変幻させていく、その技に酔った40分でした。 楽器でこれだけの演奏が出来る、というのが信じられませんでした。 神が人が与えた楽器・声でも、こういう音楽を聴きたいです。 スポンサーサイト
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NDR Sinfonieorchester Hamburg)は、戦後(1945年)結成された北ドイツの都市ハンブルクにある交響楽団。その名に北ドイツ放送を冠するとおり、北ドイツ放送協会のオーケストラ。現在の首席指揮者は クラッシックの世界【2007/09/29 20:27】
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